1. はじめに:なぜ推定相続人の確認が重要なのか?
遺言公正証書を作成する際には、「自分が亡くなったとき、誰が相続人になるのか」を事前に把握しておくことが非常に重要です。なぜなら、相続人の範囲や人数によって、遺留分(最低限の取り分)が発生する場合があり、遺言の内容が法的に制約を受けることがあるからです。
また、たとえ自分が「誰が家族なのか」を理解しているつもりでも、戸籍を調べてみると、認知していた子や養子縁組をしていた人物が記載されていることがあり、自分の認識とは異なる相続関係が明らかになることも珍しくありません。
この記事では、「推定相続人とは何か?」という基本から、実際にどのようにして自分の推定相続人を調査すればよいかを、わかりやすく丁寧にご案内します。
2. 推定相続人とは?法律に基づいて決まる「相続の候補者」
「推定相続人」とは、現在の法律に基づいて、ある人が亡くなったと仮定したときに相続人になると考えられる人たちのことを指します。これは、遺言がない場合の「法定相続人」に相当し、あくまで“現時点”での予測的な相続人です。
推定相続人は、民法の定める法定相続の順位に基づいて次のように決まります:
【相続順位とその内容】
- 第1順位:子(または代襲者である孫など) 子がすでに死亡している場合は、その子(つまり孫)が代襲相続人となります。
- 第2順位:直系尊属(父母・祖父母など) 子がいない場合に限り、父母や祖父母が相続人となります。
- 第3順位:兄弟姉妹(または甥・姪) 子も直系尊属もいない場合に、兄弟姉妹が相続人となり、すでに亡くなっていれば、その子(甥・姪)が代襲相続します。
- 配偶者:常に相続人 配偶者は順位に関係なく、常に相続人となります。他の相続人が誰かによって、配偶者が受け取る割合が変わります。
※ここで言う配偶者とは、法律上の婚姻関係にある人であり、内縁の妻・夫や事実婚の相手は含まれません。
3. 推定相続人の調査方法|戸籍の取得と読み解きがカギ
■ 推定相続人を調べるには戸籍を確認する必要がある
自分の推定相続人を正確に知るには、「自分の出生から現在までのすべての戸籍」を集めて確認することが必要です。これにより、婚姻・離婚歴、認知、養子縁組、子どもの有無などを時系列で確認でき、相続関係を正確に把握できます。
とくに、認知された子どもや養子など、見落としがないようにすることが大切です。
■ 戸籍の集め方の具体的手順
戸籍の取得には、以下のような手順を踏みます。
- 本籍地の市区町村役場に申請する
現在の戸籍だけでなく、過去の戸籍(除籍・改製原戸籍)も含め、出生時までさかのぼって全てを収集する必要があります。 - 必要書類の準備
申請には本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)が必要です。また、郵送で請求する場合は、返信用封筒と切手、定額小為替などの準備も必要です。 - 郵送または窓口で申請する
役所の窓口で直接請求することも可能ですが、遠方の場合は郵送での申請もできます。郵送の場合、書類に不備があるとやり直しになるため注意が必要です。
※直系親族(両親、祖父母、子、孫)の戸籍謄本は広域交付制度を利用する事により最寄りの市区町村役場で請求・取得が可能です。
■ 注意したいポイント
戸籍をもとに推定相続人を調べる際には、以下の点に注意が必要です。
- 改製原戸籍の存在
戸籍法の改正により、古い戸籍が廃止・改製されているケースが多いため、「現在の戸籍だけではわからない情報」が多く含まれています。 - 代襲相続の確認
亡くなった子の代わりに、その子(孫)が相続人になることがあります。戸籍をさかのぼることで、代襲者の確認も行います。 - 認知・養子縁組・離婚などの履歴
過去に認知した子や、養子にした人物も相続人に該当する可能性があります。また、前婚の配偶者との間にできた子も忘れず確認しましょう。
これらの点をすべて調べるには、戸籍の読み解きに一定の知識が必要になります。
4. 専門家への相談がおすすめな理由
戸籍の収集や解読は、普段あまり経験することのない作業であり、複数の役所への請求や古い漢字の読み解き、法的な解釈が求められる場面も多くあります。戸籍をすべて集めても、そこから正確に相続関係を導き出すには、相応の専門知識が必要です。
また、誤って相続人を除外してしまったり、遺留分に配慮しない遺言を作ってしまうと、相続発生後に争いになるリスクもあります。
そのため、相続に関する専門知識を持つ行政書士や司法書士に相談することで、推定相続人を正確に把握し、それに基づいた遺言内容の検討ができるようになります。
当事務所では、戸籍の取得代行から推定相続人の調査、遺言書の作成支援まで一貫してサポートしています。お気軽にご相談ください。
5. まとめ|相続関係を正しく把握して、後悔のない遺言書作成を
遺言書を作成するにあたって、推定相続人の確認は避けて通れない重要なステップです。「誰にどれだけ財産を遺すか」を考えるには、まず「誰が法律上の相続人になるのか」を知っておく必要があります。
戸籍を集め、相続関係を正確に把握することで、将来の相続トラブルを未然に防ぎ、あなたの意思をしっかりと残すことができます。
ぜひ一度、ご自身の推定相続人を調べてみてください。もし難しそうだと感じたら、専門家に相談することでスムーズかつ正確に進めることができます。
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